Chapter 6 : ライセンスへの道


 グライダーのライセンスを取るには、必要な航空経歴を積んだ後、1.航空従事者試験官を呼んで実地試験をおこなう場合と、2.国土交通大臣が申請により指定した航空従事者の養成施設(=指定養成施設)でおこなう指定養成コースを受講する 2つの方法があります。MAAは指定養成施設でもあるので、後者の方法でライセンスを取得することが可能です。以下、練習を始めてからライセンスを取得するまでの概略を説明します。


1. 練習を始める前に−練習許可書と無線−

 

 クラブに入会を決めたら...当面の訓練にあたって、"航空機操縦練習許可書""航空無線"の資格を個人で取得する必要があります。無線資格はこれが取れるまで、後席で指導してくれる教官が交信をおこなってくれるので急ぎませんが、練習許可書がないと練習飛行として認められません。練習許可書は、まず航空身体検査を所定の医療機関で受診して「航空機練習許可申請書」を発行してもらい、これを各自で航空局に必要書類と共に送付して申請します。これらの資格を取得したら、そのコピーを速やかに協会に提出してください。

 取得方法へのリンク→


2. Before SOLO

 入会したらまず、基本的なグライダーの操縦法を練習し、当面の目標である単独飛行(ソロ)を目指します。

 MAAでは、2種の複座型グライダー(ASK-13:JA2152/ASK-21:JA2288)を使用し、後席に教官同乗のもと訓練飛行をおこないます。尚、MAAの発航形態は飛行機曳航で、ウィンチ曳航はおこなっていません。

 

 ASK-13:JA2152
 

ASK-21:JA2288

 履修課目の順番の目安は以下の通りですが、その時の状況や教官の判断で前後することはあります。

 直線飛行と速度調整 / 旋回のための3舵操作 / 離陸と曳航機への追従 / ノーマル・ターン / 高度処理 / 場周設定 / 着陸

 また、その日の気象条件により、課目として「横風離/着陸」をおこなう必要が生じます。離着陸に関しては、操作をおこなうのに重要な因子である風向風速が日によって異なるので、異なった気象条件で離着陸できるようになるまで練習回数を要するのが実際です。

ONE POINT : ログへの記入を忘れずに!

 練習飛行をおこなったら、その内容をフライトログに記録します。この記録は、後々技能審査を申請する際に提出する資料となります。

・基本的に各フライトで関連した項目は全て埋める。

・各フライト毎では、「付記事項(=その日の飛行内容)」「教官署名(教章番号共)」の抜けが無いように!特に緊急操作の練習(索切れシミュレーション、失速orスピンからの回復)は必ず記入すること。

・訂正は、二重線で消し、各フライトの担当教官の訂正印を捺印した後訂正する。

・各項の集計で計算ミスが無いようにすること。


3.First SOLO

 上記一連の操作が無理なくおこなえ、緊急時の操作も対処できると教官が判断したら、いよいよソロフライトに出ることになります。(当然、これまでに無線の免許を取得している必要があります。)機体はそれまで練習に使用してきた複座型を使用するので、練習生は該当機の飛行規程を熟知し、特に重心関係を把握し必要に応じてバラストの搭載などを行う必要があります。因みにソロに出た感想は、飛ぶ前は緊張するが、飛んでしまえば意外といつもと同じという人が多いようです。

ONE POINT :ソロで飛んだら...教官の証明を貰いましょう!

・航空機練習許可証の裏 → 単独飛行の技能証明

・ログの技量認定項 → 1.初単独飛行、2.局地飛行、3.機種認定

以上4項目について、担当教官からの証明(署名、捺印)を受けましょう。また、滑空記章B章の申請も可能です。


4.After SOLO

 1stソロ後は、ライセンス取得のための「指定養成コース」受講が次の目的になります。指定養成コース受講の条件は、

☆航空経歴 : 総飛行時間:12時間以上 単独飛行:28回(2時間50分)以上 {更に空中操作科目20回、失速からの回復を含む5回以上の緊急操作訓練実施のこと。}

☆学科試験 : 毎年3回、国土交通省が実施する国家試験、学科試験は通称で正式名称は「航空従事者技能証明試験」に合格しておくこと。科目は、法規、気象、航空工学、航法 の4科目。

「航空従事者技能証明試験(通称:学科試験)」の詳細はこちら。

 従って、ソロ回数の積み重ねと、教官同乗のもと空中操作科目の練習が指定養成コース受講のための課題となります。また、グライダーの世界には、滑空記章と呼ばれる技能認定制度があり、30分以上の単独滞空で滑空記章C章、2時間以上1回または1時間以上2回で銅章などの獲得が可能です。

空中操作科目

備考・ポイント
追随・上昇

・安全高度の確認

・ハイ(レベル)・トー → ロー・トー変換あり

直線滑空 ・速度調整、トリムの活用
通常旋回

・周囲の安全確認

・開始、終了点の一致

急旋回

・周囲の安全確認

・開始、終了点の一致

失速と回復

・周囲の安全確認

・ノーマル、ターニング、着陸形態での各ストールを実施する。

最小操縦速度による滑空

・周囲の安全確認

・低速での緩旋回(15°バンク)

最良滑空比での滑空 ・風向風速を考慮し、BEST L/Dを選択
場周飛行・離着陸

・含 フォワード・スリップ アプローチ

・指定点着陸ができること、特にショートは不可

ONE POINT :ソロでの注意点

・ソロの3回目までは、事前に教官同乗のチェックフライト実施が必須です。

・飛行間隔が1週間以上空いた際も、事前に教官同乗のチェックフライト実施が必須です。

・海外でソロの練習をした際は、1.現地教官 か、 2.該当国の教育証明を持つ(日本人)教官 の署名でないと無効になります。


5.指定養成

 上記”航空経歴”と”学科試験”をクリアしたら、いよいよ指定養成コースへの入所です。入所にあたっては、事前に訓練所とスケジュールの調整をおこなった上で、指定養成コースを開設してもらいます。指定養成コースで最終的にパスしなくてはならないのは、外部より招く技能審査員による、口述審査(口頭試問)技能審査(実技試験)の2つです。

注:変更等もありますので、指定養成コースの詳細についてはMAAに直接お問い合わせ下さい。

 

5.1 入所申請

 訓練所と打ち合わせの上、指定養成コース入所のための必要書類(@入所申込書・航空経歴書、A技能証明申請書(市販)、B戸籍抄本or住民票、学科試験合格通知書or写し、Cフライトログのコピー(技能証明欄等含め最新のフライトまで全ページ)、D航空機操縦練習許可書の写し、E無線従事者免許証の写し、F返信用封筒、G写真一様(これが免許の写真になります))を[訓練所]に提出します。

[訓練所] では、書類と申請者の適正を確認した上入所審査をおこない、問題なければその他の必要書類と共に[滑空協会]に送ります。

[滑空協会] では提出書類で入所資格審査をおこない、問題なければ受講者は入所料を納付、スタッフはコースの打ち合わせを行った後、[航空局]に入所報告書を提出し、いよいよ指定養成コースの始まりです。

 指定養成コースは、各訓練所の教官と外部より招聘する主席教官による学科/実技教育と、最終的な試験である、技能審査官による口述審査(口頭試問)と技能審査(実技試験)により構成されています。

 

5.2 学科教育

 学科教育の概要は以下の通りです。尚、参考書としては、日本航空機操縦士協会発行のAIM-Jがお勧めです。

科目

小分類

時間
1.運行に必要な知識 1-1 一般知識 2hr
1-2 滑空機の性能運用限界 1hr
2.飛行準備 2-1 証明書、書類 1hr
2-2 整備状況及び重量重心位置 1hr
2-3 航空情報 1hr
2-4 気象情報 1hr
2-5 滑空機取扱法及び飛行前点検 1hr
3.滑空機操縦法 2hr
4.航空医学 1hr
5.試験 1hr

合計
12hr

 

5.3 実技教育(航空機曳航)

 実技教育の実施例を以下に示します。但しその時の飛行条件等により、科目内容が変更になる場合があります。

区分

飛行番号

同乗教育

単独飛行

科目内容

空中操作

失速と回復

場周飛行

離着陸
  離陸滑走、低空追随、ハイ&ロー・トー、旋回追随、離脱と回避、2,000ft離脱

第1回

 

*風上に目標を定め、以下の科目を実施

 1.ノーマルストール、ノーマルコンプリートストールからの回復

 2.ターニングストール、ターニングコンプリートストールからの回復

 3.急旋回

第2回

 

 4.最小飛行速度による飛行(含む旋回操作)

 5.場周経路へのエントリーおよび場周飛行

 6.フォワードスリップアプローチ

 7.指定地着陸

第3回

 

*風上に目標を定め、以下の科目を実施

 1.着陸形態でのストールからの回復(初期バフェット中)

 2.最小沈下率速度による飛行

 3.場周経路へのエントリーおよび場周飛行

 4.サイドスリップorターニングスリップ

 5.指定地着陸

第4回

 

*風上に目標を定め、以下の科目を実施

 1.キリモミ初期の実施と回復(左右各1回転)

 2.最良滑空比における速度の飛行

 3.場周経路へのエントリーおよび場周飛行

 4.サイドスリップorターニングスリップ

 5.指定地着陸

緊急操作

単独飛行の見極め

第5回

 

A.飛行中に口頭試問or実地操作

 1.曳航機の発動機トラブル、策切れ時の対応

 2.不時着地の選択とエントリー

B.操縦装置の使用を制限した実地操作

 3.昇降舵操作系統の故障→トリムタブ

 4.補助翼操作系統の故障→方向舵

 5.方向舵操作系統の故障→方向舵なし

 6.速度計/高度計の故障

 7.不時着のシミュレーション

C.飛行前後に口頭試問

 8.スポイラーが閉まらない場合

 9.離脱不能の処置

 10.デイッチング(着氷)の要領

 11.キリモミの要因、特性、回復

 12.サブgの知識

 13.ヘベイルアウトの要領

 14.位置不明時の対応

総合演習

第6回

 

 1.離陸、追随(レベル・トー)、離脱

 2.失速と回復(ノーマル&ターニング)

 3.急旋回

第7回

 

 4.最小飛行速度による飛行

 5.場周飛行

 6.フォワードスリップアプローチ

 7.指定地着陸

技能査定

第8回

 

 1.離陸、追随(レベル&ロー・トー)、離脱2,000ft

 2.着陸形態におけるストールと回復

 3.ターニングストールと回復

 4.急旋回

 5.最小飛行速度による飛行

 6.場周飛行

 7.フォワードスリップアプローチ

 8.指定地着陸

技能審査

第9回
  機長扱い 技能審査官同乗の下、指示された科目を実施する。

第10回
  機長扱い

技能審査官同乗の下、指示された科目を実施する。

(単独で行うこともできる)

 

5.4 口述審査

 学科、実技の教育が終了したら、技能審査官を招いて、最終試験である口述審査(口頭試問)と技能審査(実技試験)に望みます。

 口述審査は、「これからフライトができる状態にあるか否かを判断できるか?」「機長としてどこでも飛ばさせてよい技能を有しているか?」の確認であり、出発前の一連の確認作業と審査官からの包括的な口頭試問で構成されています。

=離陸前の確認=

@航空機に備え付ける書類の確認(航空法59条)

A出発前の確認(航空法73条の2)
 1.) 当該航空機およびこれに装備すべきものの整備状況
 2.) 離陸重量、着陸重量、重心位置および重量分布
 3.) 航空法第99条の規定により国土交通大臣が提供する情報
 4.) 当該航行に必要な気象情報
 5.) 燃料および滑油の搭載量およびその品質
B飛行中携帯しなくてはいけない書類
Cパイロットのメンタル、フィジカルな状態
D物件(すなわちグライダー)の曳航(航空法88条)

E積載物の安全性

=口頭試問例=

 ・METERの解読
 ・NOTAMの解読
 ・VFR/IFRの諸条件
 ・(法的な)高度に関する規制
 ・交通管制区、進入管制区、特別管制区、交通管制圏
 ・飛行包囲線図
 ・速度の略号(V、VNE、Vs1、etc.)
 ・機長の4つの義務
 ・クロスカントリーに出る時の注意点
 ・乾燥断熱減率。湿潤断熱減率、状態曲線を理解したうえで滑空気象

等々

 

5.5 技能審査

 口述審査をパスしたら、いよいよ最後の関門 技能審査です。5.3でも触れていますが、これは技能審査官を後席に乗せて、1フライトあたり審査官の指示する3科目程度を実施することになります。審査の飛行回数は2回で、2回目はソロでおこなうことが多いようです。技能審査では、各科目を上手くこなすことも重要ですが、それ以上に各状況下で安全確認ができているかどうかも大きなポイントとなります。

○コックピットに収まったら... → CHAOOTICチェック(Control、Harness、Airbrake、Outside、Option、Trim、Instruments、Canopy)等の活用

○離陸したら... → 安全高度(索切れ時のgo/return)通過時のコール、対空警戒

○離脱したら... → 離脱確認の送信(位置、高度)、基本的に風上へのヘディング設定

○科目を行う前には... → ポジション(位置、高度)、風向きの確認、空域クリア確認

○科目を行うときは... → 科目のポイントのコール、特に旋回時90°毎の空域クリア確認

○着陸する時は... → 場周経路の確認、チェックポイント到達の送信、FUSTチェック(Flap、Undecarriage、Speed、Trim)等の活用

 ↓

全ての試験が終わったら、審査官からまず講評を述べられ、次に結果発表です。

「合格です。」 

オメデトウ!これで、晴れてあなたはプライベートパイロットです!!

 

5.6 合格したら...

 技能審査に合格すると、[技能審査員]→[滑空協会]→[航空局]と書類が回り、概ね5週間後に航空局から、修了者に《自家用操縦士技能証明書》=ライセンスが送られてきます。 

 但し、まだこれだけでは飛べません。ライセンスの交付を受けたら、次は航空身体検査を行っている医療機関に出向き、航空身体検査を受診し、《第2種航空身体検査証明書》を交付を受けて、機長として飛ぶための資格が揃います。

 ライセンス取得を達成しても、グライダーの世界はそれで終わりではなく、次は海外に出て長距離飛行に挑戦したり、アクロバティックな飛行を目指したり、教育証明を取得して後進の指導に尽くしたり、モーターグライダーなどの別のカテゴリーに挑戦したりと、色々な新しい目標が見えてきます。空と飛行機が好きな方は是非チャレンジしてみてください!


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